この記事で分かること
神社のまわりの森を、「鎮守の杜(ちんじゅのもり)」と呼びます。
神様が宿り、神社とその土地を守る森として、昔から大切にされてきました。
鎮守の杜の意味と、人の手で一からつくられた明治神宮の森の物語を、史料と研究をもとにお話しします。
鎮守の杜を一言でいうと
神様がいらっしゃる場所として守られてきた、神社をつつむ森です。
神社の鳥居をくぐると、急に空気がひんやりして、木々の音に包まれることがありますよね。
その森こそが、神社のいちばん古い姿を伝えているんです。
言葉の意味を見てみよう
- 鎮守(ちんじゅ):その土地を鎮め、守る神様
- 杜(もり):神社の森
「杜」という字は、とくに神社の森を表すときに使われます。
コトバンクの辞典でも、「杜」は神社の森、神様の宿る森を表す字として説明されています。
神社の森は、学問の言葉では「社叢(しゃそう)」とも呼ばれます。
神様の宿る森【史料と伝承】
森そのものが神様の場所
古い時代、神社にはまだ立派な社殿がありませんでした。
人々は、大きな木や森、山や岩に神様が降りてくると考え、その場所でお祭りをしていました。
日本書紀には、木で囲んだ神聖な場所「神籬(ひもろぎ)」で神様をお祀りする場面が出てきます。
鎮守の杜は、この神籬の考え方を今に伝えるものだと考えられています。
神籬と磐座については、神体山と磐座の記事で紹介しています。
守られてきた森
神様の森は、むやみに木を切ってはいけない場所として守られてきました。
そのおかげで、まわりの土地が開発されても、神社の森だけは古い姿のまま残ることが多かったのです。
愛知県南知多町の羽豆神社の社叢が天然記念物に指定されているように、鎮守の杜は、その土地本来の植物が残る、貴重な自然の宝庫にもなっています。
羽豆神社については、建稲種命の記事で紹介しています。
人の手でつくられた鎮守の杜:明治神宮【研究と史料】
献木でつくられた森
東京・原宿の明治神宮の森は、大正9年(1920年)の創建にあたって、全国から献木された木を植えてつくられた人工の森です。
献木の数は、公式サイトでは約10万本、旅行読売では365種約12万本と紹介されています(諸説あり)。
政府広報オンラインの記事によると、植樹には約11万人の人々が奉仕したといわれます。
100年先の自然の森をめざして
観光庁の多言語解説によると、この森づくりは、林学者の本多静六博士らが中心になって進めました。
同じく政府広報オンラインの記事によると、森は、その土地の土や気候に合った常緑の広葉樹の森をめざして計画されました。
はじめは針葉樹なども植え、木を切ったり植え足したりせず、自然のなりゆき(遷移)にまかせることで、100年以上かけて「永遠の杜」に育てるという考え方です。
計画より早く進んだ森
政府広報オンラインの記事では、完成したときに365種あった木は、2013年の調査では234種になり、その土地に合わない木が自然に消えて、合う広葉樹が育つ「自然の選択」が進んでいると紹介されています。
しかも森の移り変わりは、計画した人たちの予想より早く進んでいるそうです。
100年前の人たちが思い描いた森に、森自身が、予定よりも早くたどり着こうとしているんですね。
明治神宮については、明治神宮の記事で紹介しています。
古神道的な読み解き
神様と森と人
鎮守の杜は、神様の場所であると同時に、人々にとっても大切な場所でした。
夏には木陰で休み、お祭りの日には森に集まる。
神様をお祀りすることが、そのまま森を守り、人々の暮らしを守ることにもつながっていたのです。
まこも考察
ここからはまこもの考察です。
鎮守の杜を調べていて、僕がいちばん心をひかれたのは、明治神宮の森が「計画より早く」自然の森へ育っている、という話です。
森を計画した人たちは、100年、150年かかると考えていました。
でも森は、人が手を加えなかったからこそ、自分の力でどんどん姿を変えていった。
神様の森とは、人が「つくる」ものではなく、人が「見守る」ものなのかもしれません。
植えたあとは、切らず、足さず、ただ見守る。
その姿勢こそが、鎮守の杜をいちばん鎮守の杜らしくするのだと思います。
ちなみに僕は、植木鉢に毎日水をやりすぎて枯らしてしまうタイプなので、「見守る」ことの難しさを痛感しています。
鎮守の杜が登場する作品
童謡「村祭」
文部省唱歌の「村祭」は、村の鎮守の神様のお祭りの日のにぎわいを描いた、よく知られた歌です。
まとめ
- 鎮守の杜は、神様が宿り、神社と土地を守る森です。
- 「杜」は神社の森を表す字で、学問の言葉では社叢とも呼ばれます。
- 古代の神籬の考え方を伝え、土地本来の自然が残る貴重な場所にもなっています。
- 明治神宮の森は、全国からの献木で人の手でつくられ、100年先の自然の森をめざして計画されました。
- 2013年の調査では、木の種類が365種から234種に変わり、森の移り変わりは予想より早く進んでいるといわれます。
人が植え、人が見守り、森が自ら育っていく。
鎮守の杜は、神様と自然と人とが一緒に生きてきた場所です。
よくある質問(FAQ)
Q. 鎮守の杜とは何ですか?
A. 神社をつつむ森のことで、神様が宿り、神社とその土地を守る森として大切にされてきました。
Q. 明治神宮の森は自然の森ですか?
A. 創建のときに人の手で植えられた森ですが、今はほとんど人の手を加えず、自然の力で育っています。
この記事は、古事記・日本書紀などの原典や、ネット上の資料を参考にまとめ、まこもが考察を加えたものです。考察の部分は「まこも考察」として書き分けています。
出典・参考文献
- 『日本書紀』巻第二 神代下 第九段 一書第二(神籬)
- コトバンク「森」 https://kotobank.jp/word/森
- 政府広報オンライン(明治神宮の森) https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201811/201811_02_jp.html
- 観光庁 多言語解説文データベース「明治神宮の森」 https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/en/H30-00510.html
- 明治神宮 公式サイト「明治神宮について」 https://www.meijijingu.or.jp/about/
- 旅行読売「明治神宮」 https://tabi-mag.jp/tk0007/


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