東国三社とは?鹿島神宮・息栖神社・香取神宮をめぐる国譲りの旅

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この記事で分かること
東国三社(とうごくさんしゃ)は、茨城県の鹿島神宮・息栖神社と、千葉県の香取神宮の三つの神社をあわせた呼び名です。

三社をつなぐ国譲りの神話、江戸時代に人々が舟に乗ってお参りした歴史、そして今、三社をめぐるときのモデルコースまで、東国三社の魅力をまとめてお話しします。

東国三社を一言でいうと

国譲りの神話でつながる神様たちが鎮まる、利根川のほとりの三つの神社です。

国譲りの神話によると、鹿島神宮と香取神宮の御祭神が日本を平定し、それを案内した息栖神社の御祭神とともに東国に鎮まった、といわれています(東国水郷観光推進協議会)。

剣の神様が二柱と、道案内の神様。
三社をめぐると、国譲りの物語の登場人物に、順番に会いに行くことになるんです。

三社の基本情報

鹿島神宮息栖神社香取神宮
所在地茨城県鹿嶋市宮中2306-1茨城県神栖市息栖2882千葉県香取市香取1697-1
御祭神武甕槌大神久那斗神(相殿:天乃鳥船神・住吉三神)経津主大神
神話での役目国譲りの使い道案内・神様の船国譲りの使い
社格常陸国一宮東国三社の一社下総国一宮
名物要石(凹形)、御手洗池、鹿園忍潮井(男瓶・女瓶)要石(凸形)、奥宮、大饗祭
授与所・御朱印8:30〜16:30御朱印9:00〜16:008:30〜17:00

※ 2026年9月27日に、各神社の公式サイトと東国水郷観光推進協議会のページで確認しました。

三社と国譲りの神話【史料】

古事記:建御雷神と天鳥船神

古事記では、天照大御神が地上の国を御子に治めさせようとしたとき、三度目の使いに選ばれたのが建御雷神でした。

爾天鳥船神、副建御雷神而遣。
(『古事記』上巻・建御雷神の派遣)

「そこで、天鳥船神を建御雷神に副えて遣わした」。

鹿島神宮の神様と、息栖神社の相殿の神様が、ここで一緒に出雲へ降りているんです。

日本書紀:経津主神・武甕槌神と岐神

日本書紀の第九段では、国譲りの使いに選ばれたのは経津主神で、そこへ武甕槌神が名乗り出て、二柱で出雲へ降りました。
鹿島神宮と香取神宮の神様が、そろって登場するのはこちらです。

そして一書第二では、国を譲ることに決めた大己貴神(おおあなむちのかみ、大国主命のこと)が、一柱の神様を推薦します。

故經津主神、以岐神爲鄕導、周流削平。
(『日本書紀』巻第二・第九段 一書第二)

読みやすくしてみると、「そこで経津主神は、岐神(くなどのかみ)を道案内にして、各地をめぐって平定した」。

この岐神が、息栖神社の主神・久那斗神です。
古事記と日本書紀をあわせて読むと、東国三社の神様全員が、国譲りの物語の中にそろって登場しているんですね。

「檝取(かとり)」の一文

日本書紀の第九段の一書第二には、「斎主神(いわいぬしのかみ)、この神は今、東国の檝取(かとり)の地にいる」という一文もあります。
香取神宮では、経津主大神の又の御名を伊波比主命(いはひぬしのみこと)としています。
奈良時代にはすでに、国譲りの神様が「東国」に鎮まっていると考えられていたことが分かります。

東国三社の歴史

「神宮」と呼ばれた二社

明治より前に「神宮」という称号でお祀りされていたのは、伊勢・鹿島・香取の三社だけでした(香取神宮 公式サイト)。
東国三社のうち二社が、伊勢の神宮と並ぶ特別な神社だったんです。

伊勢参りのあとの「下三宮巡り」

息栖神社の公式サイトによると、関東より北の人々は、伊勢神宮にお参りしたあと、「下三宮巡り(しもさんぐうめぐり)」と称して東国三社をお参りしたといいます。
江戸時代には「お伊勢参りの禊(みそぎ)の三社参り」と呼ばれるほど、篤い信仰を集めた旅でした。

東国水郷観光推進協議会のページでも、伊勢神宮にお参りしたあと、江戸から舟で東北へ戻るときに「下参宮」と称してお参りしたことから、東国三社詣がにぎわった、と紹介されています。
江戸時代のお伊勢参りについては、お伊勢参りと浪花講の記事で紹介しています。

利根川をゆく「木下茶船」

東国三社のあいだを結んでいたのは、利根川の舟運でした。

神栖市観光協会によると、息栖河岸には、東国三社をお参りする人々や、利根川下流の遊覧を楽しむ人々が各地から押し寄せ、たいへんなにぎわいを見せました。
そうした人々を乗せて利根川を上り下りしたのが、「木下茶船(きおろしちゃぶね)」と呼ばれた乗合船・遊覧船です。
木下河岸から出る船は、江戸時代の中ごろには一日平均12艘、年間1万7千人あまりが利用したそうです。

年間1万7千人。
江戸時代の人たちも、今の私たちと同じように、三社めぐりを楽しんでいたんですね。
ちなみに僕は、三社を一日でめぐる計画を立てるたびに、どこかの参道のお団子屋さんで予定が崩れます。

三社をめぐるモデルコース

車でめぐる場合

水郷潮来観光協会のモデルコース「パワースポット東国三社参り」では、次の順番が紹介されています(車の走行時間の合計は約85分・34キロメートル)。

1. 潮来IC(出発)
2. 車で約20分(7キロメートル) → 鹿島神宮
3. 車で約30分(11.9キロメートル) → 息栖神社
4. 車で約35分(14.7キロメートル) → 香取神宮(到着)

鹿島で国譲りの神様にお参りし、息栖で道案内の神様にお参りして、最後に香取へ。
国譲りの物語を、神様に案内してもらいながらたどっていくような順番です。

電車とバスでめぐる場合

  • 鹿島神宮:JR鹿島線「鹿島神宮駅」から徒歩約10分
  • 息栖神社:JR鹿島線「鹿島神宮駅」または「潮来駅」からタクシーで約20分。東京駅からの高速バス「かしま号」で「アートホテル鹿島セントラル」下車、タクシーで約5分
  • 香取神宮:JR成田線「佐原駅」からタクシーで約10分。JR「香取駅」から徒歩約30分

息栖神社は駅から少し離れているので、タクシーやレンタカー、バスツアーを組み合わせるのがおすすめです。

めぐる順番について(諸説あり)

東国三社をめぐる順番について、各神社の公式サイトでは、決まった順番は確認できませんでした。
めぐる順番については諸説あり、いくつかの考え方が紹介されています。

鹿島神宮 → 息栖神社 → 香取神宮 の順

旅行ガイドなどでよく紹介されている順番です。
「これが本来の順番だ」とする説も存在しますが、公式に定められたものではなく、諸説あるうちの一つです。

その理由としては、次のような考え方が紹介されています。

  • 鹿島は「始まりの地」だから:奈良時代の防人(さきもり)が鹿島の神様に祈って旅立ったことから「鹿島立ち」という言葉が生まれたように、鹿島神宮は旅立ちや物事の始まりにふさわしい場所なので、最初にお参りするとよい、という考え方です(旅行・神社の紹介サイトなど)。
  • 神話の役回りに沿っているから:剣の神様(鹿島)のあとに、道案内の神様(息栖)をはさんで、もう一柱の剣の神様(香取)へ向かう流れが、国譲りの神話の役回りに合っている、という説明も見られます。
  • 道順がスムーズだから:地図の上で、無理なく一筆書きでまわれる順番です。水郷潮来観光協会のモデルコースも、この順番になっています。

ただし、どれも神社が公式に定めたものではなく、あくまで一つの説として紹介されているものです。

香取神宮から始める順、逆回り

香取神宮から始めたり、逆回りでめぐったりしても差し支えない、とする紹介もあります。
こちらの順番に、特別な理由付けがあるのかどうかは明らかではありません。

僕としては、ご自分の旅程に合わせて、無理のない順番でお参りするのがいちばんだと思います。
どの順番でも、三社それぞれで丁寧に手を合わせることが、いちばん大切なのではないでしょうか。

2026年は午年、12年に一度の年

東国三社をめぐるなら、2026年は特別な年です。
鹿島神宮と香取神宮では、12年に一度、午年に大きなお祭りが行われます。

  • 香取神宮の式年神幸祭:4月15日・16日。御神輿を乗せた御座船「鷁首船(げきしゅせん)」が利根川を進み、鹿島神宮による御迎祭も行われます(香取神宮 公式サイト)
  • 鹿島神宮の式年大祭御船祭:2026年は9月1日から3日にかけて行われました。80隻を超える船が北浦の湖上を渡御し、香取神宮の宮司が鹿島の御座船に乗りこむ「香取神宮御迎祭」もあります

香取の御座船「鷁首船」と、鹿島の御座船「龍頭船」は、対になっているそうです(香取神宮 公式サイト)。
12年ごとに、二つの神宮が川と湖の上で迎え合う。
国譲りの相棒どうしの、長いおつきあいが今も続いているんです。

双宮守と東国三社守

香取神宮の公式サイトによると、令和8年(2026年)の式年大祭を祝って、香取神宮と鹿島神宮の両方で「双宮守(そうぐうまもり)」が頒布されています。
両神宮の御座船「鷁首船」「龍頭船」をあしらったお守りで、両神宮でお受けして、ひとつに合わせることで完成するそうです。

また、息栖神社の授与品の一覧には「東国三社守」があります。
三社をめぐった記念に、お守りを集めるのも楽しいですね。

※ 授与品の内容や頒布期間は変わることがあります。お出かけの前に各神社の公式サイトで確認してください。

古神道的な視点での読み解き

剣・剣・道

東国三社の神様を並べてみると、きれいな組み合わせになっています。

  • 鹿島:剣と雷の神様(建御雷神)
  • 香取:剣と祈りの神様(経津主神、又の御名は伊波比主命)
  • 息栖:道と境の神様、神様の船(久那斗神・天鳥船神)

剣の神様が二柱と、その神様たちを導き、運んだ神様。
力だけでは国は治まらず、道を示す者、運ぶ者がいて、はじめて物語は動きます。

水辺の三社

三社はどれも、利根川や北浦、霞ヶ浦など、水に囲まれた土地にあります。
鹿島には御手洗池、息栖には忍潮井、香取には津宮浜鳥居。
どの神社にも、水と深く結びついた場所があります。
古代、このあたりには大きな内海が広がっていたといわれます。
東国三社は、水を渡ってやって来た神様たちの社なのかもしれません。

まこも考察

ここからはまこもの考察です。

東国三社を調べていて、僕がいちばん心を動かされたのは、「下三宮巡り」という言葉です。

江戸時代、遠い伊勢まで歩いてお参りした人たちが、その帰り道に、もう一度東国三社をめぐった。
伊勢の神宮で天照大御神にお参りしたあとに、その天照大御神の命を受けて国譲りを成しとげた神様たちのもとを訪ねる。
それは、神話の順番どおりに旅を締めくくることでもあったのではないでしょうか。

しかも、三社の中には、道案内の神様と、神様を運んだ船の神様がいます。
長い旅を終えようとしている人たちが、最後に「導く神様」「運ぶ神様」にお参りする。
無事にここまで来られたことへの感謝と、これからの道を守ってほしいという願い。
その両方を、息栖の神様に託していたような気がするんです。

鹿島の要石は凹形、香取の要石は凸形。
二つがぴたりと組み合わさって、地の底を支えている。
そしてそのあいだを、息栖の神様が静かにつないでいる。
東国三社は、三つそろって、はじめて一つの物語になる神社なのだと、僕は思います。

伝承・関連する話

【伝承】凹と凸の要石

鹿島神宮の要石は上がへこんだ凹形、香取神宮の要石は上が出っぱった凸形。
二つの要石が、地中の大ナマズの頭と尾を押さえていると伝えられています【伝承】。
東国三社をめぐるなら、ぜひ二つの要石をくらべてみてください。
くわしくは要石と鯰絵の記事で紹介しています。

【噂・俗説】三社を結ぶと三角形になる

三つの神社を地図の上で結ぶと、きれいな三角形になる、という話がよく紹介されています【噂・俗説】。
神社の公式な由緒ではありませんが、地図を広げて、自分で線を引いてみるのも楽しいかもしれません。

【噂・俗説】鹿島神宮は諏訪大社の真東にある

神栖市観光協会のページでは、鹿島神宮は、国譲りで建御雷神と力比べをした建御名方神の諏訪大社の真東にあって、いまだに諏訪大社をにらんでいる、というお話が紹介されています【噂・俗説】。
本当ににらんでいるのかは分かりませんが、神話の続きを想像したくなる話ですよね。

東国三社ゆかりの作品・モデルになった作品

映画『すずめの戸締まり』(2022年)

新海誠監督のアニメ映画で、地震を起こす「ミミズ」を鎮める「要石」が、物語の大切な鍵になっています。
作品の中で東国三社の名前が出てくるわけではありませんが、民俗学者の畑中章宏さんは、この映画の解説記事の中で、要石による地震鎮めの信仰として、鹿島神宮と香取神宮の要石を紹介しています(CINRA)。

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(小説・アニメ)

鹿島神宮の御祭神・建御雷神をもとにした武神「タケミカヅチ」が登場します。
くわしくは建御雷神の記事で紹介しています。

参拝の作法・アクセス・御朱印

※ 以下の情報は、2026年9月27日に各神社の公式サイトと観光協会のページで確認したものです。変更されることがあるので、お出かけの前に公式サイトで最新の情報を確認してください。

鹿島神宮息栖神社香取神宮
参拝境内は参拝自由境内は参拝自由境内は参拝自由
授与所・御朱印8:30〜16:30社務所8:30〜16:00、御朱印9:00〜16:008:30〜17:00
最寄りJR鹿島神宮駅から徒歩約10分JR潮来駅から車で約20分JR佐原駅から車で約10分
電話050-1724-50070299-92-23000478-57-3211
公式サイトhttps://kashimajingu.jp/https://ikisujinja.com/https://katori-jingu.or.jp/
鹿島神宮の地図(Googleマップ)
息栖神社の地図(Googleマップ)
香取神宮の地図(Googleマップ)

参拝は、どの神社も一般的な「二拝二拍手一拝」です。
三社それぞれの見どころや参拝の順番は、各神社の記事でくわしく紹介しています。

まとめ

  • 東国三社は、鹿島神宮・息栖神社・香取神宮の三つの神社をあわせた呼び名です。
  • 三社の神様は、国譲りの神話でつながっていて、剣の神様二柱と、道案内・船の神様がそろっています。
  • 江戸時代には、伊勢参りのあとの「下三宮巡り」「お伊勢参りの禊の三社参り」としてにぎわい、利根川の木下茶船で多くの人が訪れました。
  • 車なら、潮来ICから鹿島 → 息栖 → 香取とめぐって、合計約85分・34キロメートルのモデルコースがあります。
  • 2026年は午年で、鹿島の御船祭、香取の式年神幸祭が行われ、記念の双宮守も頒布されています。

剣の神様と、道を示す神様。
東国三社をめぐる旅は、国譲りの物語を、神様に案内してもらいながらたどる旅なのかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q. 東国三社はどこにありますか?
A. 鹿島神宮は茨城県鹿嶋市、息栖神社は茨城県神栖市、香取神宮は千葉県香取市にあります。三社は利根川や北浦の近くにあり、車ならそれぞれ20〜35分ほどで行き来できます。

Q. 三社は一日でめぐれますか?
A. 車なら一日でめぐることができます。水郷潮来観光協会のモデルコースでは、潮来ICから鹿島・息栖・香取とめぐって、車の走行時間は合計約85分です。電車の場合は、息栖神社が駅から離れているので、タクシーなどを組み合わせると安心です。

Q. めぐる順番に決まりはありますか?
A. 各神社の公式サイトでは、決まった順番は確認できませんでした。順番については諸説あり、「鹿島神宮 → 息栖神社 → 香取神宮」の順がよいとする説も存在します。鹿島は「鹿島立ち」の言葉のように始まりの地だから、神話の役回りに沿っているから、道順がスムーズだから、といった理由が紹介されています。

Q. なぜ「東国三社」と呼ばれるのですか?
A. 三社の神様が、国譲りの神話でつながっているからです。鹿島と香取の神様が国を平定し、息栖の神様がそれを案内して、ともに東国に鎮まったといわれています。

この記事は、古事記・日本書紀などの原典や、ネット上の資料を参考にまとめ、まこもが考察を加えたものです。考察の部分は「まこも考察」として書き分けています。

出典・参考文献

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