住吉三神ってどんな神様?禊から生まれた海と祓いの三柱の神様

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朝日の海から三柱そろって現れる住吉三神と、遠くを進む遣唐使船、白砂の松のイメージイラスト
住吉三神のイメージイラストです

この記事で分かること
住吉三神(すみよしさんじん)は、底筒男命(そこつつのおのみこと)・中筒男命(なかつつのおのみこと)・上筒男命(うわつつのおのみこと)の三柱の神様です。

伊邪那岐命の禊から生まれた誕生、神功皇后に神がかりして海を渡らせた物語、そして「筒(つつ)」という名前の謎まで、史料と伝承に分けてお話しします。

住吉三神を一言でいうと

海の底・中・上から生まれた、海と航海、そして祓い(はらえ)の神様です。

大阪の住吉大社の御祭神で、全国に約2300社ある住吉神社の総本社として信仰されています(住吉大社 公式サイト)。
茨城県神栖市の息栖神社でも、相殿にお祀りされています。

三柱で一組の神様。
いつも一緒にいるので、一柱ずつ性格を覚えようとすると、なかなか大変です。
でも、そこがこの神様たちの面白さでもあるんです。

名前の意味を見てみよう

「そこつつのお」「なかつつのお」「うわつつのお」は、次のように分けられます。

  • そこ・なか・うわ(底・中・上):海の底、海の中、海の上
  • つつ(筒):意味に説がたくさんある
  • のお(之男):〜の男

いちばんの謎は、「筒(つつ)」です。
國學院大學の神名データベースでは、次のような説が紹介されています。

  • 「つち」が変化したもので、「つ(〜の)」+「ち(霊)」、つまり神霊を表す
  • 「津路(つぢ)」で、海路のこと
  • 星のこと。航海の目印になる星を神様にしたもの
  • 「つ(〜の)」+「津(港)」で、港をつかさどる神様
  • 対馬の地名「豆酘(つつ)」
  • 「槌(つち)」で、航海のまじないに使う棒
  • 文字どおり「筒」で、船の帆柱の下に船霊(ふなだま)を納めた筒

星だとすると、底・中・上の三柱は、オリオン座の三つ星ではないか、という話を聞いたことがある人もいるかもしれません【噂・俗説】。
ただ、國學院大學の神名データベースでは、星一般を「つつ」と呼んだ例がないことや、記紀の中に星の神様がほとんど見えないことなどから、星とする説には批判もあると紹介されています。
日本神話でめずらしい星の神様については、天津甕星の記事でも紹介しています。

住吉三神のプロフィール

項目内容
読みそこつつのおのみこと・なかつつのおのみこと・うわつつのおのみこと
表記底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命(古事記)/底筒男命・中筒男命・表筒男命(日本書紀)
総称墨江之三前大神(すみのえのみまえのおおかみ)(古事記)、住吉大神(日本書紀)
生まれ伊邪那岐命が禊をしたとき、海の底・中・上で身をすすいで生まれた
一緒に生まれた神様底津綿津見神・中津綿津見神・上津綿津見神(阿曇連の祖神)
関わりの深い人神功皇后(息長帯比売命)

どの文献に出てくる?

古事記【史料】

禊から生まれる

伊邪那岐命は、黄泉の国から逃げ帰ったあと、その穢れを清めるため、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原で禊をしました。
そこで、次々に神様が生まれます。

次於水底滌時、所成神名、底津綿上津見神、次底筒之男命。於中滌時、所成神名、中津綿上津見神、次中筒之男命。於水上滌時、所成神名、上津綿上津見神、次上筒之男命。
(『古事記』上巻・みそぎ)

読みやすくしてみると、「次に、水の底ですすいだときに生まれた神様の名は底津綿津見神、次に底筒之男命。水の中ほどですすいだときに生まれた神様の名は中津綿津見神、次に中筒之男命。水の上ですすいだときに生まれた神様の名は上津綿津見神、次に上筒之男命」。

そして、古事記はこう続けます。

其底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命三柱神者、墨江之三前大神也。

「その底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命の三柱の神様は、墨江(すみのえ)の三前の大神である」。

「墨江」は、今の大阪の住吉のことです。
このあと、伊邪那岐命が左の目を洗うと天照大御神が、右の目を洗うと月読命が、鼻を洗うと須佐之男命が生まれます。
住吉三神は、三貴子のすぐ前に生まれた、とても尊い神様たちなんです。

神功皇后への神がかり

住吉三神は、古事記の中巻、仲哀天皇の段にも登場します。

仲哀天皇が、九州で熊曽(くまそ)の国を討とうとしていたとき、皇后の息長帯比売命(おきながたらしひめのみこと、神功皇后)に神様が乗りうつり、「西の方に、金銀や宝物がたくさんある国がある。その国を与えよう」と告げました。
ところが天皇は、「高いところから西を見ても、海しか見えない」と言って、神様の言葉を信じませんでした。
すると神様は大いに怒り、天皇はまもなく亡くなってしまいます。

もう一度神様にお伺いを立てると、その国は、皇后のお腹の中にいる御子が治める国だと告げられました。
そこで、神様の名前を尋ねると……。

是、天照大神之御心者。亦底筒男・中筒男・上筒男、三柱大神者也。
(『古事記』中巻・仲哀天皇)

「これは天照大神の御心である。また、底筒男・中筒男・上筒男の三柱の大神である」。

ここで初めて、神様たちは自分の名前を明かしました。
そして、「私たちの御魂を船の上にお祀りして、海を渡りなさい」と教えます。

その教えどおりに海を渡ると、海の魚たちが大きいものも小さいものもみな船を背負って運び、追い風が吹いて、船は一気に海を渡ったといいます。
そして、皇后は杖を新羅の国王の門に突き立てて、「墨江大神之荒御魂(すみのえのおおかみのあらみたま)」を、国を守る神様としてお祀りしてから帰りました。

日本書紀【史料】

禊から生まれる

日本書紀の第五段の一書第六でも、伊弉諾尊の禊から三柱が生まれます。

其底筒男命・中筒男命・表筒男命、是卽住吉大神矣。
(『日本書紀』巻第一・第五段 一書第六)

「その底筒男命・中筒男命・表筒男命は、すなわち住吉大神である」。

日本書紀では、「上筒男命」ではなく「表筒男命(うわつつのおのみこと)」と書かれています。

神功皇后への神託

日本書紀の神功皇后の巻でも、皇后に神がかりした神様たちが、次々に名前を明かしていきます。
その中に、こんな言葉があります。

於日向國橘小門之水底所居而水葉稚之出居神、名表筒男・中筒男・底筒男神之有也。
(『日本書紀』巻第九・神功皇后摂政前紀)

読みやすくしてみると、「日向国の橘の小門の水の底にいて、水草の若葉のように生き生きと現れ出る神、その名は表筒男・中筒男・底筒男の神がいる」。

住吉に鎮まる

さらに、戦いから帰る途中、皇后の船が海の上で進めなくなったとき、神々がそれぞれ鎮まりたい場所を告げます。
住吉三神は、こう告げました。

吾和魂、宜居大津渟中倉之長峽。便因看往來船。
(『日本書紀』巻第九・神功皇后摂政元年)

読みやすくしてみると、「私たちの和魂(にぎみたま)は、大津の渟中倉(ぬなくら)の長峡(ながお)に鎮まるのがよい。そこで行き来する船を見守ろう」。

「行き来する船を見守ろう」。
航海の神様らしい、頼もしい言葉です。
この「大津の渟中倉の長峡」が、今の大阪の住吉にあたるとされています。

その他の文献【史料】

万葉集
住吉大社の公式サイトによると、奈良時代、遣唐使を送り出すときには、必ず住吉大神に海上の無事を祈りました。
万葉集には、住吉の神様の言葉として、遣唐使の無事の帰りを約束した歌が残されています。

住吉に 斎く祝が 神言と 行くとも来とも 船は早けん

「住吉にお仕えする神職が伝える神様のお言葉では、行きも帰りも、船は速く進むだろう」。

古史古伝での扱い

古史古伝での住吉三神の扱いについては、内容を確かめられる資料が見つからなかったため、この記事では紹介を控えます。

御神徳(ご利益)

住吉大社の公式サイトでは、住吉大神の御神徳を次のように紹介しています。

  • 祓いの神様:伊邪那岐命の禊祓から生まれたため、神道でもっとも大切な「祓(はらえ)」をつかさどる神様です。
  • 海の神様・航海安全:海の中から現れたことから、航海に関わる人や漁師に信仰されてきました。
  • 和歌の神様:白砂青松の美しい住吉の地は、多くの歌に詠まれ、和歌・文学の神様としても信仰されてきました。
  • 農耕・産業の神様:苗代の作り方を教えたという伝説から、農耕の神様、さらに産業の神様としても信仰されています。

息栖神社の公式サイトでは、住吉三神は海上守護にご神徳が顕著な神様とされています。

祀る主な神社

住吉大社(大阪府大阪市住吉区)

住吉三神と、神功皇后をお祀りする、全国の住吉神社の総本社です。
摂津国の一宮で、『延喜式』の名神大社にも名前が載っています。
公式サイトによると、神功皇后摂政11年(西暦211年)、住吉大神の神託によって、今の住吉の地にお祀りされたと伝えられています。

境内には約600基の石燈籠があり、その多くは、江戸時代に海の運送に関わった人々から奉納されたものだそうです。
毎年6月14日の「御田植神事」は、神功皇后が長門国から植女を呼んで田を作り、五穀豊穣を祈ったことが始まりと伝えられています。

息栖神社(茨城県神栖市)

久那斗神を主神とし、相殿に天乃鳥船神とともに住吉三神をお祀りしています。
利根川の河口近く、かつて海だった土地で、海上守護の神様として信仰されています。
くわしくは息栖神社の記事で紹介しています。

全国の住吉神社

住吉大社の公式サイトによると、住吉神社は全国に約2300社あります。
港町や海辺の町で「住吉神社」を見かけたら、住吉三神がお祀りされていると思ってよさそうです。

古神道的な読み解き

禊と祓いの神様

住吉三神は、伊邪那岐命が黄泉の国の穢れを清める禊の中から生まれました。
つまり、「清めること」そのものから生まれた神様なんです。

住吉大社の夏祭り「住吉祭」が、単に「おはらい」とも呼ばれ、大阪だけでなく日本中を祓い清める意味があるとされてきたのも、この誕生の物語によるものです(住吉大社 公式サイト)。

底・中・上の三つ

海の底、中、上。
三つの深さから、三柱の神様が生まれています。
これは、海のすべての深さを守る、ということなのかもしれません。

同じとき、同じ場所で、綿津見神(わたつみのかみ)の三柱も生まれています。
古事記では、この綿津見神の三柱は、海人(あま)の一族である阿曇連(あずみのむらじ)がお祀りした神様だとされています。
海の底から上まで、六柱の神様がそろって生まれた。
海が、どれほど大切にされていたかが伝わってきます。

まこも考察

ここからはまこもの考察です。

住吉三神は、禊から生まれた神様です。
伊邪那岐命は、愛する伊邪那美命を失い、黄泉の国でおそろしいものを見て、深く傷ついていました。
その穢れを清めるために海へ入り、底へ、中へ、上へと身をすすいでいったとき、生まれたのが住吉三神でした。

僕は、この順番がとても大切だと思っています。
いちばん深い底から始まって、だんだん水面へ上がっていく。
深く沈んだ悲しみの底から、少しずつ光のある水面へ戻ってくる。
禊とは、そういう「浮かび上がる」ことなのかもしれません。

そして、その禊のいちばん最後に、天照大御神、月読命、須佐之男命が生まれます。
住吉三神は、光の神様が生まれる直前に、道を清めてくれた神様だった。
だからこそ、今も海を渡る人の道を清め、行き来する船を見守ってくれているのだと思います。

他の神様とのつながり

  • 伊邪那岐命:禊のときに、住吉三神を生んだ神様
  • 天照大御神・月読命・須佐之男命:同じ禊で、住吉三神のあとに生まれた三貴子
  • 綿津見神(わたつみのかみ):同じ禊で、一緒に生まれた海の神様。阿曇連の祖神
  • 神功皇后(息長帯比売命):住吉三神が神がかりした皇后。住吉大社で一緒にお祀りされている
  • 事代主神:日本書紀で、神功皇后に住吉三神と同じように名前を明かした神様の一柱
  • 久那斗神・天鳥船神:息栖神社で一緒にお祀りされている神様

伝承・関連する話

【伝承】和歌の神様・住吉

住吉大社の公式サイトによると、白砂青松の住吉の浜は、万葉集や古今和歌集で数多く詠まれ、平安時代からは歌の道を志す人々が参拝するようになりました。
古今和歌集の「我見ても 久しくなりぬ 住吉の 岸の姫松 いく代経ぬらむ」という歌は、今も神楽の曲として歌われているそうです。

海の神様が、和歌の神様にもなる。
美しい景色は、神様の力の一つなのかもしれません。
僕も住吉の浜に立ったら一首詠めるかな、と思いましたが、たぶん「海がひろい」くらいで終わりそうです。

住吉三神が登場する作品

昔話『一寸法師』

誰もが知っている昔話「一寸法師」は、実は住吉の神様と深い関係があります。

住吉大社の公式サイトのコラムによると、室町時代の後期から江戸時代の初めにまとめられたとされる『御伽草子』の「一寸法師」では、子どもに恵まれない老夫婦が住吉の神様にお願いをして、ようやく授かったのが一寸法師でした。
お椀の船に乗り、針の剣を腰に差し、お箸をオールにして、一寸法師は住吉の浦から京へ上ります。
物語の最後は、「住吉の御誓ひに末繁昌に栄たまふ」と締めくくられているそうです。

住吉大社では、この信仰から、子宝・安産・立身出世の神様としても崇敬されている、と紹介されています。
お椀の船で旅立つ一寸法師を見送ったのが、航海の神様・住吉三神だったと思うと、あの昔話が少し違って見えてきます。

まとめ

  • 住吉三神は、底筒男命・中筒男命・上筒男命(表筒男命)の三柱の神様です。
  • 伊邪那岐命の禊のとき、海の底・中・上で身をすすいで生まれました。
  • 古事記・日本書紀では、神功皇后に神がかりして、海を渡らせた航海の神様として描かれます。
  • 「筒(つつ)」の意味には、神霊、海路、星、港、船霊など、さまざまな説があります。
  • 住吉大社を総本社とし、祓い・航海・和歌・農耕の神様として信仰され、息栖神社でもお祀りされています。

深い海の底から、光のある水面へ。
住吉三神は、今も海を渡る人たちの道を、静かに清めてくれているんですよね。

よくある質問(FAQ)

Q. 住吉三神は、なぜ三柱なのですか?
A. 伊邪那岐命が禊をしたとき、海の底・中ほど・上の三か所で身をすすぎ、それぞれから一柱ずつ生まれたからです。

Q. 「上筒男命」と「表筒男命」は、同じ神様ですか?
A. はい、同じ神様です。古事記では「上筒之男命」、日本書紀では「表筒男命」と書かれています。

Q. 住吉三神は、どんなご利益がありますか?
A. 住吉大社の公式サイトでは、祓い、海上安全・航海安全、和歌・文学、農耕・産業の神様として紹介されています。

Q. 住吉三神と神功皇后は、どんな関係ですか?
A. 古事記・日本書紀では、住吉三神が神功皇后に神がかりして神託を告げ、海を渡らせたとされています。住吉大社では、住吉三神とともに神功皇后もお祀りしています。

この記事は、古事記・日本書紀などの原典や、ネット上の資料を参考にまとめ、まこもが考察を加えたものです。考察の部分は「まこも考察」として書き分けています。

出典・参考文献

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